名古屋大学の吉田久美教授らを含む学際的な国際共同研究グループが、赤キャベツのアントシアニンから新しい青色天然着色料を見出した。

 料理に彩りを与える食品着色料は、昨今、合成色素から天然色素への転換が進んでいる。しかし、青色だけは天然色素による安定な発色が困難で、合成タール系色素である青色1号が使われ続けてきた。

 一方、赤キャベツがもつアントシアニン色素は、酸性で赤、中性で紫、アルカリ性で青色を示すが、青色は不安定なため、アントシアニンを青色着色料として使うことはほぼ不可能とされてきた。アントシアニンと金属イオンを結合させて錯体を形成すると、中性でも青色を示すことが知られているものの、赤キャベツ色素は10種以上のアントシアニンの混合物であり、透き通った青色を発色させることは困難だった。

 そこで本グループは、赤キャベツの個々の色素を単離し、個別に金属イオンを加えて発色を調べたという。すると、P2と番号をつけたアントシアニンだけが、アルミニウムイオンを加えると極めて美しく、かつ安定な、青色1号に匹敵する青色を示すことがわかった。この色素は、P2とアルミニウムイオンが3:1で含まれた構造をとり、他の色素では得られない特別な錯体であることもわかった。

 この色素を実際に用いて菓子のコーティングをしたところ、青色1号と遜色のない色が得られ、保存安定性にも優れていることが確認された。P2は赤キャベツの中に少量しか含まれないため、本研究では、酵素による選択的加水分解反応によって、純粋なP2を大量に調整する方法も開発した。

 この極めて有望な新しい青色天然着色料は、食品産業において天然着色料への切り替えをさらに加速させるものと考えられる。

論文情報:【ScienceAdvances】Discovery of a natural cyan blue: A uniquefood-sourced anthocyanin could replace synthetic brilliant blue

大学ジャーナルオンライン編集部

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