筑波大学の谷口俊介准教授らの研究チームは、ウニの幼生が光の刺激を受けると、胃の出口である幽門が開くことを発見した。同じ後口動物であるヒトなどの脊椎動物でも同様の仕組みの発見が期待される。

 光は生命活動におけるエネルギー源や視覚の情報源であり、「体内時計」の調整などで生命活動の入力情報としても利用される。こうした光の役割や光刺激を伝達する仕組みの解明は進んでいるが、ヒトを含む脊索動物と姉妹群をなす棘皮動物では研究報告が少なく、光応答の仕組みが進化の過程でどのように現れ、多様化したのかを真に論じることが難しかった。

 研究グループは、棘皮動物のバフンウニにおける記載可能な光応答経路の有無を確認するため、顕微鏡下で、太陽光の半分程度の強さの光を当てた幼生を観察した。その結果、光照射の約2分後に幼生の幽門が開口した。多くの動物の幽門開口は胃の食物の刺激によって制御されるが、今回の光刺激による幽門開口は、食物の摂取前から生じており、これは光の機能の一つに消化管の制御があることを示すという。

 また、ウニ幼生を用いた実験から光刺激伝達の経路も分かった。まず、ウニの脳が神経伝達物質のセロトニンを放出、その刺激が幽門近傍の細胞に伝達され、一酸化窒素を放出することで開口が行われていた。

 今回、脳から腸への連絡が光刺激伝達の担い手であることが判明した。脳と腸が影響を及ぼし合う「脳腸相関」の仕組みが、後口動物(原口が肛門になり、口は新たに生じる動物)の共通祖先に存在した可能性がある。今後、同じ後口動物であるヒトなどの脊椎動物でも「光」によって脳腸相関が刺激される経路の発見が期待されるとしている。

論文情報:【BMC Biology】Sea urchin larvae utilize light for regulating the pylorus opening

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