白血球は体を病気から守る働きを持つが、脳内でその免疫機能を担うのはミクログリアと呼ばれる細胞。脳卒中などの障害で死んだ細胞の除去や脳回路の働きを監視するなど脳内の健康維持に重要な細胞とされる。今回、生理学研究所と山梨大学の研究グループは、発達期のマウスを用いて、ミクログリアが神経細胞に接触して、神経細胞間のつなぎ目(シナプス)の新生を促し、大脳皮質の脳回路を作る役割を担っていることを特殊な顕微鏡によって明らかにした。
脳内の神経細胞以外の細胞はグリア細胞(神経膠細胞)と呼ばれ、ミクログリアはその1種。細長い突起がありその先端を伸ばしてシナプスと接触することで機能の監視と調節を行っているとされ、近年その役割が注目されている。しかし、脳内から取り出すと状態が変化してしまい、脳内に存在する本来の状態のミクログリアの機能を調べることは困難だった。
今回、研究グループは生きた動物の脳内の細胞を観察することができる特殊な顕微鏡(2光子励起顕微鏡)を用い、発達期のマウスのミクログリアと神経細胞の接触の状態を詳細に観察した。その結果、シナプスの元になると考えられる「フィロポディア」という突起構造が形成され、その後シナプスへの成長が観察された。また、ミクログリアの数と活性化状態がシナプス形成に影響を与えることや、さらに、発達期だけでなく成熟期のマウスでもシナプス形成促進による大脳皮質の情報伝達機能構築への関与が見られたという。
ミクログリアの神経回路形成への関与が解明されたことにより、今後、ミクログリアをターゲットとした新しい治療法や予防につながる可能性が期待される。