台湾や日本列島にあるいくつかの温泉に、オタマジャクシが生息していることは以前より知られていた。しかし今回、広島大学と総合研究大学院大学の研究者らは、両生類の幼生として、これまで記録された中で最高温度(46.1度)の温泉で生息しているオタマジャクシを発見した。
発見場所は、長崎から真南へ約310キロメートルの東シナ海上に浮かぶ、亜熱帯の小さな島、口之島の森の中にある浅い泥沼(セランマ温泉)。研究対象となったのは、リュウキュウカジカガエル(学名:Buergeria japonica)だ。このカエルは、日本の南西部に位置する火山群島から成るトカラ列島に生息する唯一の在来種両生類。他の両生類には温か過ぎる湯の中でも生存できるように適応し、その新しい生息環境をうまく利用することで、他種との生存競争を避けることができたという。
セランマ温泉ではカエルの成体は見つかっていない。そのため、カエルの一生のうちで初期幼生の段階、つまりオタマジャクシの間だけ、高温に適応している可能性がある。将来の研究では、この環境でのオタマジャクシの生態解明が焦点だという。
今回の研究の最終著者である広島大学の井川武助教は、「(進化論の)ダーウィンやウォレスの時代以来、科学者たちは生物の分布とその環境適応に関する研究を続けています。我々の報告は、動物が多様な環境条件に対して見せる生理的適応力と、多様な地理的場所への定着、その二つの直接的なつながりを示す好例の一つ」と語る。