現代のアスファルト舗装やコンクリート構造物は、昔の構造物よりも極めて短期間に損傷してしまう。損傷が進むと、細粒粉だけの状態となる砂利化や、ブリスタリング(膨張)、剥離、亀裂、非晶質化などが発生し、安全性が損なわれるため、様々な方法で原因究明が試みられてきたが、未だに世界中でこの現象は不可解なものとされてきた。
北海道大学の研究グループは、市販のセメントが水と混合すると瞬時に嫌な臭いが発生することを「偶然」発見したことから、フタル酸エステルが加水分解した物質がこの臭いの原因であること、劣化したアスファルト舗装やコンクリート構造物中にもフタル酸エステルがごく微量に含まれることを見出した。また、AE減水剤、自動車のウォッシャー液中の界面活性剤、融雪剤中の界面活性剤なども検出されたことから、これらの有機物がアスファルト舗装やコンクリート構造物にどのような影響を与えているかを調べることにした。
実験は、アスファルト舗装の滑走路で表層が剝がれた夏季の日と同一の気象条件(24時間の表面温度、底面温度、相対湿度)を再現して実施した。その結果、外気温の変動に伴い、構造物自身が呼吸をするように空中の湿気や様々な極微量の有機物を短期間に取り込んでいることが判明した。コンクリートにアスファルト舗装をしたりビニールシートを置いたりしても、外気の湿気や舗装表面の極微量の有機物は簡単に通過して劣化を促進することも確認された。すなわち、セメント中および空気中の2か所に存在する極微量の有機物が、短寿命化に影響しているのだという。
構造物の短寿命の原因解明に初めて成功した本研究成果は、世界中のアスファルト舗装及びコンクリート構造物を長寿命化するための技術開発に寄与することが期待される。