岡山大学大学院の棏平将太大学院生(現東京科学大学特任助教)らの研究グループは、ヒトiPS細胞から、玉や板などさまざまな形態の軟骨組織体を作製し、ミニブタ膝関節軟骨欠損モデルへの移植に成功した。
軟骨組織は血管が乏しく自己修復能に乏しい。一度損傷が起こると、変性が進行し、将来的な変形性膝関節症につながり関節痛や運動障害の原因となる。自己・他家由来の細胞を使用した軟骨の再生は、修復組織の質・移植部での生物学的癒合性において依然として課題が多い。研究グループは今回、軟骨損傷患者の運動機能改善に向け、iPS細胞由来の軟骨組織体の移植の成功を目指した。
研究グループはこれまでに、ヒト多能性幹細胞由来肢芽間葉系細胞(ExpLBM)を、軟骨分化能を維持した状態で拡大培養する技術の開発に成功していた。
今回の研究では、臨床応用を想定し、ミニブタ膝関節骨軟骨欠損モデルを用いて、免疫抑制下に様々な形状のExpLBM由来硝子軟骨様組織体を作製し、大型動物への異種移植を行った。ExpLBMを3次元培養と自己凝集化技術を用いた培養で軟骨分化誘導を行い、球状あるいは板状のExpLBM由来硝子軟骨様組織を作製し、両膝大腿骨内顆にそれぞれ3mm径の骨軟骨欠損部に移植を行った。
移植後2週での組織学的評価で、すべての移植部位において、正常軟骨に近い組織形態を有するExpLBM由来硝子軟骨様組織体の生着が確認された。
今回、iPS細胞由来の軟骨組織を異種移植し、生着や機能維持の成功が確認できた。安全性や有効性の評価が進み、将来的なヒトへの応用や関節疾患の再生医療への道が開かれたとしている。