早稲田大学(スマート社会技術融合研究機構)とデンマーク工科大学の国際研究チームは、寝室内換気と睡眠の質の関係について、過去の研究を整理・分析し、寝室の換気状況を示す指標として用いられる二酸化炭素濃度が1000ppmに達すると、睡眠効率や深睡眠割合が低下することを確認した。

 寝室の不十分な換気が睡眠の質に及ぼす影響については、従来の研究でも関心が寄せられてきた。特に、室内のCO2濃度が高まると、覚醒時に眠気や集中力が低下することは広く知られていたが、寝室内の換気不足や、それによるCO2濃度の上昇が睡眠に与える影響については統一的な結論に至っていない。

 そこで研究グループは、寝室の換気状況と睡眠の質を同時に測定した合計17本の研究(2020年1月~2024年8月発表分)を整理・分析した。寝室内のCO2濃度や換気条件と、睡眠効率(就床から起床までの時間に対する実際の睡眠時間の割合)、深睡眠(徐波睡眠)割合、入眠潜時(就床から入眠までの時間)といった睡眠指標との関係を比較した。

 その結果、寝室の換気状況を示す指標の二酸化炭素濃度が1000ppm(空気100万に対しCO2が1000の割合)に達すると睡眠効率や深睡眠割合が低下すること、さらに安全側に余裕を持たせて睡眠の質が低下する可能性を十分に低く抑えるには800ppm以下を目標とすべきであることが明らかになった。また、この水準を満たすには、現行の住宅換気基準の少なくとも2倍の換気量が必要であることを示した。

 今回の研究成果では、睡眠という生活行動と換気環境を結び付け、寝室で目安となるCO2濃度を提示した点が特徴。今後、住宅の設計規格や換気設備の改良、省エネルギー型換気技術の開発につながることが期待されるとしている。

論文情報:【Science and Technology for the Built Environment】New research on bedroom ventilation and sleep quality suggests that building standards should be revisited (ASHRAE 1837-RP)

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