東京大学大学院 農学生命科学研究科附属 生態調和農学機構の矢守航 准教授らの研究グループは、室内にある鉢植えのバラに根元から上向きの光を当てることで花が長持ちしてバラを美しく保てることを突き止めた。

 東京大学によると、切り花を美しく保つ方法はこれまで、さまざまな研究が進められているが、室内に置いた鉢植えの管理方法はあまり明らかになっておらず、室内の光が不十分で花がすぐに落ちることが珍しくなかった。

 植物が花を咲かせるには光の強度や照射時間が大きな影響を与えている。室内は光が弱いため、照明器具で補う必要があるが、上から照明を当てるには器具を天井からぶら下げたり、スタンドライトを設置したりしなければならず、手間がかかるうえ、見た目を損なうことが多い。さらに、植物の下部にある葉が光が当たらずに枯れてしまうこともある。

 そこで、研究グループは薄暗い部屋に置いた鉢植えのバラに根元からLED(発光ダイオード)の上向き照明を当て、光合成の状況を調べたところ、下部の葉は上から照明を当てたとき以上に活性化していることが分かった。上部や中部の葉は上下どちらから光を当てても、大きな差が出なかった。

 植物には人の心をいやす効果があるといわれている。研究グループは上向きの照明を当てることでバラを長持ちさせることができ、病院やリハビリ施設などで人々の心を明るくできるのではないかとみている。

論文情報:【HortScience】Upward LED lighting from the base suppresses senescence of lower leaves and promotes flowering in indoor rose management

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