2016年9月、国際学術団体IAP for Healthが生物医学研究の実験再現性の向上を求める声明を発表。日本学術会議は11月8日、日本のアカデミーを代表してその趣旨に同意し、世界の45アカデミー(8月現在)とともに署名したことをホームページ上で公表した。
IAP for Healthは各国学術機関から成り、現在78機関が加盟。加盟機関の過半数の賛成により声明を発出、世界の保健衛生の改善に向けた取組を行っている。
科学では実験によって仮説を検証する。その結果を外部の研究者が再現実験を行うことで仮説の信頼性を検討する。そのため同じ条件で繰り返した実験は同じ結果が得られなければならない。しかし、2015年に発表された心理学分野の結果の再現性プロジェクトにおいて100の研究結果のうち36%しか再現性が認められなかったように、実際は再現性のある知見に基づいていない場合が多い、とIAP for Healthは指摘する。
多数の生物医学研究の再現性欠如の主な原因として、不十分な研究デザインや実施、不適切な統計分析、不完全な報告を挙げ、このような事態は「医学生物学の評価をおとしめ、その結果に対する一般社会からの信頼を低下させ」ると危惧している。
IAP for Healthは、加盟アカデミーによるこれまでの取り組みを評価した上で、非再現性に対処するための提言を行っている。大学・研究機関、資金提供機関、出版社・ジャーナル編集、研究者に向け、主に、研究の確実性を重視し、研究成果の公開性や透明性、中立性を高めるとともに、再現性確保のためのコミュニケーションの必要性を強調する。
また、各国の加盟アカデミーの役割としては、研究に関連するさまざまな利害関係者や機関に対し、非再現性についての認識を高め、解決への努力とそのための教育・訓練の支援や、国際的な議論と協働の促進が必要としている。