街の夜間照明が都市部に生息する昆虫の冬眠を妨げていることを、摂南大学理工学部の向井歩助教、大阪市立大学大学院理学研究科の後藤慎介教授らの研究グループが突き止めた。都市の温暖化の影響を受け、冬眠に入る時期も遅くなっている。
摂南大学によると、研究グループは都市部に生息し、夜の長さを読み取って冬眠に入る習性を持つナミニクバエを用い、室内と野外で実験した。
室内では、気温20度と15度の環境を作り、さまざまな照度の夜間照明を当てて冬眠に入る個体の割合を調べた。その結果、夜間照度を上げれば上げるほど冬眠に入る個体が減少し、気温20度の環境だと15度に比べて冬眠する個体が少ないことが分かった。
野外では、周囲に夜間照明が少なく、晴れた日の満月程度の明るさとなる約0.2ルクスと、夜間照明が多く、夜の住宅街程度の明るさになる約6ルクスの環境で、冬眠に入るかどうかを調べた。約0.2ルクスの環境では多くの個体が10~11月に冬眠に入ったものの、約6ルクスの環境だとほとんど冬眠しなかった。
さらに、夜間の明るさがほぼ0ルクスの郊外と都市部の約0.2ルクスの環境を比較してみたところ、約0.2ルクスの環境では10月中旬から冬眠に入る個体が増えたのに対し、郊外では9月下旬から増加していた。平均気温は都市部が郊外より日平均で約2.5度高く、研究グループは夜の明るさと気温の両方が昆虫の冬眠に大きな影響を与えているとみている。
論文情報:【Royal Society Open Science】Urban warming and artificial light alter dormancy in the flesh fly