東京海洋大学は岩谷産業、関西電力、名村造船所が進める水素燃料電池船の開発に参画する。2025年に予定されている大阪・関西万博で会場となる大阪市此花区の人工島・夢洲と大阪市中心部を商用運航する計画。
東京海洋大学によると、開発する水素燃料電池船は60~100トンクラスで、定員150人程度。搭載した燃料電池で水素と酸素を反応させ、電気を作って動力にする。水素燃料電池船は従来の船舶に比べ、二酸化炭素や環境負荷物質の排出を抑えられるほか、騒音や振動、匂いを感じないなどのメリットを持つ。
岩谷産業などは大阪・関西万博で水素燃料電池船の商用運航を実現することにより、国内外に水素エネルギーの可能性をPRするとともに、将来の海上輸送を環境にやさしく、持続可能なものとすることに貢献したい考え。同時に船舶用水素ステーションの実証実験も行う。
東京海洋大学は2008年からリチウムイオン電池を搭載した急速充電対応型電池推進船の開発に取り組み、これまでにさまざまなタイプの船を建造、就航させてきた。この経験で得た知見を今回の水素燃料電池船に生かし、商用運航に適した船の建造を進める。
世界の貿易の99%以上は船で荷物を輸送しているが、船の燃料は重油や液化天然ガスで、年間に排出される二酸化炭素は約8億トンに上る。この量は南米・アマゾンの熱帯雨林が吸収する量の約8割といわれ、船のエネルギーの脱炭素化が新時代の課題に浮上している。