宮崎大学と久留米大学を中心とする研究グループ(他に埼玉大学・農研機構・大阪大学・久留米高専)は、血液の分解プロセスの最終段階であり、新生児黄疸の原因にもなる生体内反応の仕組みをタンパク質の立体構造解析法を駆使して明らかにした。これまで有効な薬剤がない黄疸の治療薬開発に大きな手掛かりを与えるという。研究成果は英国科学誌『Nature Communications』で公開された。

 血液中で酸素を運ぶ主成分として知られるヘムは、その分解過程でビリベルジンからビリルビンとよばれる色素に順次変換されて体外に排出される。ビリルビンは黄色を呈する色素であり、新生児黄疸の原因物質にもなっている。ビリベルジン還元酵素とよばれるタンパク質がビリベルジンをビリルビンに変換することは知られていたが、その具体的な仕組みは50年以上のあいだ謎に包まれていた。

 今回、ビリベルジン還元酵素の反応メカニズムを、X線結晶構造解析と呼ばれる手法によって分子・原子レベルで解明した。ビリベルジン還元酵素は、ビリベルジンを二つ同時に取り込み、その一つがもう一方を変換し、ビリルビンをつくることがわかった。このような機構の生体内反応は前例がなく、世界で初めての発見として実証することに成功した。

 現在、軽度の黄疸には光照射治療が行われているが、重度の新生児黄疸では、有効な治療薬がないことから血液の全交換の必要がある。ビリベルジン還元酵素の反応を阻害する薬剤が開発できれば、ビリルビン合成量の制御が可能になるため、画期的な黄疸治療薬となる可能性がある。今回の成果により、ビリルビンの過剰産生が原因となる重度の新生児黄疸(ビリルビン脳症)の治療薬開発が期待される。

大学ジャーナルオンライン編集部

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