東京医科歯科大学大学院の藤原武男教授らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第1波中に園行事を中止しなかった保育所では、園児の自制心や協調性などの社会情動的スキルが感染症拡大前より伸びている傾向にあることを明らかにした。

 コミュニケーションスキル、子ども自身の感情をコントロールするスキル、問題解決をするスキルなどは非認知スキル(社会情動的スキル)と呼ばれ、保育所での発表会などの園行事は、子どものそのような能力を発達させる重要な機会とされる。感染症拡大により世界中で多くの保育所の閉園・園行事の中止が見られた。保育所の閉園による子どもや保護者のメンタルヘルスの悪化は研究で示されているが、園行事の中止による影響は不明だった。

 調査対象は東京都内の3つの保育所に通園する32名の4~5歳児。子どもの社会情動的スキル調査はCOVID-19拡大前の2019年11月と2020年1月に偶然実施していた。COVID-19第1波中の2020年3月に3回目を実施し、いずれも担任保育士が評価した。すべての保育所が2020年3月2日から自主的な園封鎖を実施し、2園が園行事の発表会を中止し、1園のみが3月4日に発表会を開催した。

 その結果、COVID-19拡大前と比べて、第1波中の園行事を中止した保育園児の社会情動的スキルは下がる傾向にあった。一方、園行事を中止しなかった保育園児の社会情動的スキルは、COVID-19拡大前より伸びている傾向にあることが明らかになった。

 これにより研究グループは、コロナ禍でも感染対策に十分注意しながら園行事を行うことが子どもの育ちに重要とみている。今後、COVID-19拡大時において園行事を実施するか中止するかの判断に、今回の結果が役立つことが期待されるとしている。

論文情報:【Frontiers in Psychiatry】Impact of school closure due to COVID-19 on the social-emotional skills of Japanesepreschool children

大学ジャーナルオンライン編集部

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