芝浦工業大学工学部情報工学科の新熊亮一教授は、携帯電話基地局の通信量を精度高く予測し、それに応じて基地局の稼働・休止を切り替えるシステムを考案した。
世界では、4~5千億kwhと推計される世界の基地局の電力使用量(2016年)を削減するため、同様の研究が進んでいる。日本では、国内携帯大手3社の基地局関連の電力消費量合計は約51億kWh(各社最新のサステナビリティレポートからの概算)に上る。一方、サービス展開が進む5Gの基地局は4Gと比べてカバー範囲が狭く、基地局を増やす必要がある。また、脱炭素に向けて電源の再エネ化も進んでいるが、供給量が不安定なため通信量に応じて電源を切り、電力消費量を削減する必要もある。しかし、休止中の基地局の通信記録を学習できず、通信量の予測精度低下が課題となっている。
新熊教授は、稼働中の基地局からの記録のみでも、その中から最も重要度の高い記録を推定して学習に組み込み、一般的な機械学習とシンプルな特徴選択の組み合わせで、高い予測精度を達成した。休止した各基地局は電力使用量を約6割削減でき、CO2排出量削減には通信量に応じた制御が重要。また電力供給量が気候に左右される再生可能エネルギーで基地局電力をまかなうことにも対応できる。
今後は、テキストや動画、Webページなど、さまざまな通信上のアプリケーションデータを区別し、それぞれの特徴を抽出して、機械学習モデルを作り予測精度を向上させる。例えばオンライン会議は長いなど、アプリケーションによって通信時間が異なるため、その特徴を考慮した制御も可能になる。