金沢大学の研究グループは、オキシトシンを小腸で吸収する仕組みを発見し、さらにその補給が未熟児の社会性(社会脳)の発達に役立つ可能性があることを見いだした。
オキシトシンは、人が他人のこころを推し量り交流していく際に必要なペプチドホルモンとされ、それを司る社会脳の発達に欠かせないものと考えられている。脳内で合成されたオキシトシンは、脳内に分泌されたり、血液中へも放出される。
母乳中にも多くの栄養素とともに血液から濃縮されたオキシトシンが含まれており、母乳を飲むことで乳児にオキシトシンが伝わることが知られていた。しかし、腸管では生後間もなくして腸管障壁が形成されるため、オキシトシンは腸管から自由に移行することができないと考えられており、腸管障壁の存在下でオキシトシンがどのように体液に取り込まれるのか、これまで全く知られていなかった。
本研究グループは、Receptor for Advanced Glycation Products(RAGE)という分子が小腸の絨毛上皮細胞にあり、それがオキシトシンを腸管側から体内側へ輸送する役目を担ってオキシトシンが吸収されていることを明らかにした。これは、RAGEがオキシトシンを輸送することから、オキシトシンを薬や栄養物として口腔投与できることを意味する結果だ。また、粉ミルクにオキシトシンを添加して与えることで、未熟児の発育における社会性低下および自閉スペクトラム症発症を低減できる可能性も示唆したといえる。