慶應義塾大学の杉浦悠毅専任講師らの研究グループは、質量分析イメージング技術を高精度化し、感情や行動の調節を担うモノアミンの量をマウス全脳で視覚化することに成功した。気分障害の理解向上が期待される。

 脳内のモノアミン(セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン)は少数の特殊なニューロンが用いる神経伝達物質で、感情や行動の調節を担う。現在、うつ病や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療には、脳内モノアミン量を調節する医薬品が欠かせない。しかしこれまで、モノアミンについては脳内に存在する部位やその量、または作用メカニズムなど不明点が多かった。

 研究グループは以前より、質量分析を用いてさまざまな分子の分布を調査できる「質量分析イメージング」の開発を進めてきた。今回、測定値のばらつきを小さくすることができる「内標準法」と呼ばれる解析法を適用。これにより、多数の測定結果を比較できる高精度な分析法を構築し、マウス全脳のモノアミンマッピングを実施した。

 作成したモノアミンの全脳地図からは、複数のモノアミン集積核が新たに同定された。中でも、恐怖、不安といった情動調節に深く関わる「視床室傍核」と呼ばれる神経核に、セロトニンとノルエピネフリンが極めて多く集積することが判明し、この神経核がセロトニン神経系とノルエピネフリン神経系をつなぐ重要な神経核であることが示唆された。

 脳画像を取得する技術はさまざまだが、モノアミンを直接検出する方法で全脳マッピングした例は今回が初めて。今回発見された視床室傍核を含む新しいセロトニン神経回路は、精神疾患に対する新規治療薬開発のための新しい創薬標的となることが期待される。

論文情報:【iScience】Detection of a high turnover serotonin circuit in the mouse brain using massspectrometry imaging

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大学ジャーナルオンライン編集部

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