情報通信研究機構は機械の稼働と停止を繰り返す間欠運転をする光格子時計を参照し、国家標準時を生成することに世界で初めて成功した。光格子時計が発生する1秒を基準に標準時が刻む1秒の長さを調整することにより、標準時の協定世界時に対する時刻差を従来の10億分の20秒から10億分の5秒以内へ短縮することが可能になる。
情報通信研究機構によると、光格子時計は2001年に東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊准教授(当時)によって提案された光時計の方式。現在同機構を含む6機関が開発したストロンチウム、またはイッテルビウムの光格子時計は二次周波数標準として国際的に認められ、協定世界時(UTC)が刻む1秒を校正する能力を持つ。同機構が開発したストロンチウム光格子時計は安定した光を生成し、周波数の不確かさが極めて小さいのが特徴。この光は精度を劣化させずにマイクロ波の電気信号に変換でき、日本標準時のマイクロ波出力周波数と比べることで日本標準時の刻み幅がどの程度ずれているのかを正確に計測することができる。
近年は第5世代移動通信システム(5G)や衛星測位、超高速取引などマイクロ秒を超えてナノ秒領域での時刻精度を求める分野が増えてきた。各国の標準時は世界標準時を参照し、時差(日本はプラス9時間)をつけて同期する形で生成されている。
今回の研究成果はより正確な標準時生成に大きく役立つもので、2030年に想定されている国際単位系の秒の再定義実現にも大きな力になるとみられる。