顔面に特有の構造体で、肌の最深部に存在する表在性筋膜(SMAS)は、これまでの研究で、加齢により菲薄化し、たるみの原因になることが示唆されてきた。しかし、あまりに肌の深い場所に位置するがゆえに、非侵襲的な観察が難しく、十分に明らかとされてはこなかった。

 そこで、株式会社資生堂と山梨大学は、高性能MRIを顔面に適用することによって、SMASに存在する水分子シグナルを画像化し、SMASの水分量を計測する手法を考案。これにより、菲薄化の程度を示すSMASの水分量が、加齢に伴い減少していることを見出し、世界で初めて加齢に伴うSMASの形態変化を定量的に明らかにすることに成功した。

 また、SMASの水分量が多い群と少ない群を比較すると、対象者の年齢やBMIが同程度であっても、SMASの水分量が少ない方が有意にたるみの程度が大きく、肌のハリも低下していることが認められた。このことから、顔のたるみは、SMASの老化による形態変化も一因となって生じることが示された。

 さらに、整体院などで行われている「筋膜リリース」という施術から着想を得て、「顔の筋膜リリース」とも言うべきSMAS に着目した新しい美容ソリューションを開発した。加齢によって変化したSMASを物理的に引きはがすように、両手で肌の奥をつまみ刺激を与え、頬全体をひきあげる独自の手技と、これを効果的に行えるように工夫をした製剤を組み合わせることで、8週間連用した対象者に著名なたるみ改善効果が認められたとしている。

 本研究により、肌の最も深い部位であるSMASがたるみに関与すること、そしてSMASを刺激して顔のこわばりやコリを解消すれば、たるみの改善が期待できることが明らかとなり、今後もたるみという顔の加齢変化に対する研究開発が加速することが期待される。

参考:【株式会社資生堂】資生堂、世界で初めて表在性筋膜の加齢変化を定量化(PDF)

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