9月3日、芝浦工業大学は、同大学応用化学科の吉見靖男教授が脳神経の動きをモニタリングする新たな手法を開発したと発表しました。この手法によってアメフラシの脳神経の複数部位の伝達活動を可視化することに成功しました。この成果は生物の本質的な認識メカニズムをひもとく一助となることが見込まれており、神経系疾病の治療法の開発等につながることも期待されています。

人は口や目などの感覚器官で得た情報を、千数百億におよぶ脳の神経細胞の伝達によって認識し、対応を判断して行動しています。そのメカニズムを解明するには複数の神経活動が伝わっていく様子をモニタリングする必要がありますが、情報の伝達速度が非常に速いことなどから、正確に動きをとらえることは困難でした。吉見教授は、他の生物と比べてきわめて大きな神経細胞をもつアメフラシを用いて、脳にあたる神経節にアンモニウム塩を投与し、味覚認識中の脳神経の伝達スピードを遅らせることで、これまで不可能だった脳神経の伝達活動をとらえる手法を確立しました。それにより、アメフラシが好むワカメと嫌いなテングサをそれぞれ与えたところ、脳の特定部位が活動し、嫌いな味覚への活動はより早く活動が始まることが明らかになりました。また、好きな味覚を与えた後に電気ショックを与える実験を繰り返すと、それまで「好き」と認識していた味覚が学習によって「嫌い」と認識されるようになることも確認されました。

吉見教授は、今後は物事を認識する際に脳内を神経信号がどう伝わっていくのかの伝達メカニズムと、経験により認識が変化していく学習のメカニズムを明らかにしていくとしています。脳内の神経伝達による認識と学習のメカニズムの解明が進むことで、人の味覚障害や目、耳の障害などそれぞれの症状に合わせた人工感覚器、認知症やうつ病など神経系の疾病の新たな治療法の開発などへの応用が期待されます。

出典:【芝浦工業大学】アメフラシの脳神経の伝達活動をモニタリングする新手法を開発

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