東京大学分子細胞生物学研究所の堀越正美准教授らの研究グループは、約25億年前に起こった古細菌から真核細胞への進化のきっかけの中心であったと考えられる遺伝子制御システムの複雑化の仕組みを解明した。
約60年前に、ポーリング氏らによってDNAやタンパク質の配列から進化の変遷を予測する「分子進化学」という分野が生まれたが、数十億年前の古代生物のDNAやタンパク質は分解して残っておらず、分子レベルで進化の仕組みを直接知ることは不可能であった。
そこで、同グループは、DNAやタンパク質に含まれる繰り返し配列に着目し、進化の過程で生じた現存遺伝子と祖先遺伝子の違いを算出できる新しい解析法を世界で初めて考案した。この解析法を利用して、同グループは、約25億年前に起こった古細菌から真核細胞への進化の様子を初めて明らかにした。転写開始を指令するTBP(TATAボックス結合因子:TATA box-binding protein)の繰り返し配列に生じた変異が真核細胞では高度に保存されたため、真核生物TBPには多くの転写関連因子が相互作用することで、複雑化の一途をたどったことが明らかになった。
太古の時代に起こった進化の仕組みが明らかになったことで、これまで解かれることのなかった分子進化上の様々な疑問が解明できると期待される。