京都大学の研究グループは、京都市産業技術研究所・京都バイオ計測センター、黄桜酒造との産官学連携共同研究により、ノンターゲットメタボローム解析を用いて、山廃(やまはい)特別純米酒(大吟醸酒相当)のおいしさの謎を解く新物質を発見した。
清酒の国内消費が低迷する中、京都が誇る特別純米酒(大吟醸酒相当)は、高級ワインに負けない品質を実現すべく香りの数値化に成功し、今や世界中に輸出され好評を博している。一方で、美味吟醸酒の製法過程は杜氏の勘に頼っており、おいしさの謎は残ったままだった。
本研究グループは、酵母・麹菌・乳酸菌による並行複発酵を特徴とした日本古来の酒造り「生もと造り」を基盤とする吟醸相当の特別純米酒、山廃仕込み酒について、そのおいしさの謎を解くべく最新のノンターゲットメタボローム解析を行い、発酵過程での代謝物の変動を解析した。
その結果、6つの化合物が日本酒の発酵過程を特徴づけるものとして新たに特定された。そのうち2つは旨味と関連する呈味性化合物であると予測され、残りの4つは、乳酸菌と米のタンパク質から生じたと予測されるロイシンまたはイソロイシン含有ペプチドとして同定された。これらの化合物が、発酵過程で徐々に増加することによって吟醸酒のおいしさを損なう共雑物をマスクし、味覚に影響を与えずに酒を吟醸酒に仕立てるという可能性が示唆された。
本成果により、これまで杜氏の勘に頼っていた美味大吟醸酒の製法過程を化学分子の眼で査定できるようになり、今後、大吟醸酒を安定した品質で安価に供給できる道が広がることが期待されている。
論文情報:【PLOS ONE】Metabolite profiling of the fermentation process of “yamahai-ginjo-shikomi” Japanese sake