大阪市立大学の湯井悟志大学院生、坪田誠教授らの研究グループは、慶應義塾大学との共同研究において、極低温状態で発生する量子乱流の発達に伴い、常流体の速度分布が大きく変形することを発見。数百年の謎である乱流の解明に大きく迫る成果という。
自然界には気体や液体の流れが複雑に乱れた「乱流」が多くみられる。約500年前、レオナルド・ダ・ヴィンチは乱流のスケッチを描き「乱流は渦からなる」と推測。しかし、これまで乱流の発生メカニズムや特徴は十分解明されていなかった。
物質が極低温になると金属では電気抵抗がゼロになる「超伝導」が、流体では液体の粘性がゼロになる「超流動」が報告されている。液体ヘリウムにおいて観測される超流動現象は、量子力学に支配された現象であることが知られている。
理論物理学者ランダウは、この超流動現象に関して粘性がなくなった超流体と粘性を持つ常流体が混在した「二流体モデル」を提案。二流体モデルは、低温物理学の多様な現象の解明に大きく貢献した。一方、量子渦の変形・輸送で表現される超流体と水のように空間を隙間なく満たす常流体は異質で複雑なため実験結果を説明する計算はまだ不可能とされた。
研究グループは、超流体の運動を担う量子渦を数式で表した方程式と、常流体の流れを表す方程式(ナヴィエ・ストークス方程式)を連立し大規模な数値計算を実施。それにより、量子渦が成長し毛玉状の量子乱流を作ると、常流体の速度分布が大変形を起こすことを世界で初めて示した。これによりダ・ヴィンチのアイデアが検証された。
今回の成果によりさらに複雑な流体および乱流挙動の実証、ひいては乱流現象の解明につながることが期待される。