京都大学大学院 教育学研究科の高松礼奈助教と楠見孝教授、大阪大学大学院 人間科学研究科の入戸野宏教授は、子どもの性格に関する情報が、子どもに対するかわいい評価や養護欲求に影響することを明らかにした。
大人にかわいいと感情を抱かせ、養護欲求(お世話したい)を高めるはずの子どもたちが、被虐待児として犠牲になるのはなぜなのか。本グループでは、外見以外の要因(性格に関する情報)が、子どもの見た目のかわいさ、印象、養護欲求に関わるのかどうか、一連の実験を行った。
実験1では、20〜40代の女性72名が参加し、子どもの顔写真をもとにかわいさ、印象について評価した後、子どもの顔に性格情報を付随させ、再びかわいさ、印象について評価した。その結果、同じ外見であっても、好ましい性格の子どもに対してはかわいい評価が上がり、好ましくない性格の子どもに対してはかわいい評価が下がった。さらに、かわいい感情が低下すると、養護欲求も低下した。
実験2では、20〜40代の女性108名が参加し、もともとの外見のかわいさで3群に分けた子どもの顔写真について実験1と同様の手順をした後、1週間後にも同じ項目について評価した。その結果、もともとの外見のかわいさに関係なく、実験1と同様に好ましい性格条件では、かわいさ、友好さ、賢さの評価が上がり、反対に好ましくない性格条件では、それぞれの評価が下がった。加えて、好ましくない性格情報の負の効果は、もともとのかわいさに関係なく、1週間後のかわいい評価にも持続して影響がみられたという。
本研究は、「かわいさは見た目だけではない」ことを実験によって裏づけた成果といえる。例えば、子どもの言動を悪く捉えがちな養育者は、子どもに対してかわいいと感じお世話したい気持ちが持続的に低下してしまう可能性も示唆している。