大阪大学大学院の八木麻未特任助教(常勤)・上田豊講師らの研究グループは、子宮頸がんを防ぐHPVワクチンの接種勧奨が差し控えられていた期間に接種機会を逸した人のためのキャッチアップ接種について、接種率のいくつかのシナリオを設定し、積極的勧奨の差し控えによる接種率減少が生んだ子宮頸がんリスクの上昇を、どの程度低減できるかをシミュレーションにより予測した。
子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16、18型を含むハイリスク型HPV感染だ。子宮頸がんはHPVワクチン導入により他の先進国では減少傾向だが、日本では近年増加している。2013年6月から2021年11月まで、接種後に生じたとされる多様な症状への懸念から、厚生労働省による積極的勧奨が差し控えられていた。
研究グループは、公費でのHPVワクチン接種が開始する前の1993年度生まれの女性の生涯の子宮頸がん罹患・死亡リスクを1として、1994年度生まれ以降の女性の相対リスクを推計。積極的勧奨の差し控えによる接種率減少が生んだリスク上昇を低減するために必要な定期接種率・キャッチアップ接種率について検証した。
3年間(2022~2024年度)で必要な接種率に達した場合と1年間(2022年度)で達した場合を比較した結果、1年間に90%を達成した場合は接種率が最も高い1997年度生まれのリスクまで低減できることが判明した。
今回の研究により、積極的勧奨の差し控え前の接種率(90%)よりも高い接種率を3年かけて達成しても、積極的勧奨の差し控えによる接種率減少が生んだリスク上昇を1997年度生まれのリスクまで低減できないことが分かった。接種勧奨策などの実施により、早期に接種率を上げることが重要としている。