厚生労働省がHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種推奨を控えていることにより、子宮頸がんの罹患者増が約1万7,000人に上り、死者の増加が約4,000人と推計されることが、大阪大学大学院医学系研究科の八木麻未特任助教、上田豊講師らの分析で分かった。

 大阪大学によると、HPVは皮膚につくタイプと粘膜につくタイプがあり、粘膜につくタイプが子宮頸部に感染すると子宮頸がんに進行することがある。予防にはワクチン接種が効果的だが、厚労省は副作用への懸念から2013年以降、積極的な推奨を控えており、2000年度以降に生まれた女性のHPVワクチン接種率が激減している。

 八木助教らの研究グループは2000年度以降に生まれた女性の子宮頸がん罹患・死亡相対リスクを予測し、生まれた年度ごとの罹患者と死亡者の増加数を推計した。その結果、接種率が低いまま定期接種の対象年齢を超えた2000~2003年度生まれの女性で将来の罹患者数が約1万7,000人、死亡者数が約4,000人増えることが分かった。

 HPVワクチンは厚労省が推奨を差し控えた期間に接種していなかった女性に接種の機会を与えることで効果を上げることが期待できる。今回の罹患者、死亡者の増加という推計結果は、ワクチン接種で予防できたはずの女性が接種を行わなかったために罹患する結果となるとして、研究グループは一刻も早く接種推奨の再開が必要としている。

論文情報:【Scientific Reports】Potential for cervical cancer incidence and death resulting from Japan’s current policy of prolonged suspension of its governmental recommendation of the HPV vaccine

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