東京大学の坂元晴香特任研究員と上田ピーター客員研究員は、オンラインで「日本人の性的行動に関する全国調査」を実施した結果、諸外国に比べて日本は性的活動が低調であり、またその満足度も低いことが明らかになった。
本調査は、日本に住む20-49歳の男女8000人を対象とし、日本の人口を反映するように性別で層別化し、年齢、婚姻状況、居住地域に関して重み付けを行うことで全国代表性のある解析を実施した。また、異性間に限らずあらゆる性的指向を有する人を対象に加えた新規性を有する調査である。
性交渉経験について、女性の15.3%、男性の19.8%がこれまでの生涯で性交渉相手なしと回答した。欧米でも性交渉未経験者の割合は年々増加傾向にあるというが、それと比較しても日本における割合は高い水準である(例:英国では25-34歳の女性の10%、男性の7%で性交渉経験が無いと回答)。
過去1年間に性的パートナーがいなかった割合も女性で45.3%、男性で44.5%にのぼり、他の先進諸国に比べて突出して高く(例:ドイツでは過去1年間に性交渉経験がないとの回答が男女ともに約20%前後)、日本では性的活動が不活発であることもまた明らかとなった。性生活に不満と回答した人は女性で17.6%、男性で27.1%で、この点も諸外国と比較して高かった。
他方、日本では性産業の利用が諸外国と比較して圧倒的に多く、女性の4.0%、男性の48.3%が性産業の利用経験があると回答している(スウェーデンでは生涯の性産業利用経験が男性で約10%、女性では1%未満、イギリスでも過去5年間の性産業利用が男性で3−5%の範囲、女性はほぼゼロである)。
総じて、日本では諸外国に比べて性交渉経験が乏しく、また性交渉への満足度も低いことが明らかとされた。このように、日本人の性的指向や性的活動の実態を明らかにすることは、セクシャルヘルスに関する社会課題解決のための介入方法の設計や評価に際して重要な情報となるとしている。