感覚運動の不一致とは自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しないこと。この時に重だるさや不快感などの経験を生じることが報告されており、これが痛みに影響を与える可能性がある。畿央大学の松田総一郎氏(博士後期課程)と大住倫弘准教授は、筋骨格系疼痛患者を対象にした検討により、感覚運動の不一致によって生じる重だるさが痛みの遷延化に影響を与えることを明らかにした。
骨折や組織損傷直後のギプス固定により、患者が「自分の手とは思えない」「自分の手に違和感や不快感がある」などと表現する身体知覚の異常を引き起こすことが報告されている。これは自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しない感覚運動の不一致に起因するとされる。これにより例えば、奇妙さや不快感、あるいは重さだるさなどが引き起こされる。しかし、感覚運動の不一致による身体知覚の異常が痛みの予後に及ぼす影響については不明だった。
そこで今回、筋骨格系疼痛患者を対象に感覚運動不一致を誘発させる実験タスクを実施。外傷もしくは手術後2ヶ月以内に1回目の実験を行い、その2週間後、4週間後の合計3回行った。その結果、不一致条件によって生じやすい異常知覚は痛み・重だるさ・奇妙さだった。検討の結果、初期の痛みの強さは予後に関係しなかったが、不一致条件で経験する重だるさが2週間後と4週間後の痛みを予測すると分かった。これは、異常な身体知覚の中でも重だるさという経験が痛みに影響を与えることを示唆している。
今後は、筋骨格系疼痛患者の運動機能も含めてより詳細な評価を行い、感覚運動の不一致によって生じる異常知覚の影響を検証する必要があるとしている。