森林研究・整備機構森林総合研究所、宮崎大学医学部、東北大学大学院生命科学研究科らのグループは、海外の研究機関と共同で、モデル生物である線虫Caenorhabditis elegansの姉妹種 Caenorhabditis inopinataを沖縄県石垣島のイチジクの一種から発見し、全ゲノムの解読を行った。
線虫(C.elegans)は医学・生命科学分野で幅広く使用され、過去3つのノーベル賞の研究に関連するなど、様々な重要な発見を導いてきたモデル生物だ。しかしながら、この優秀なモデル生物は「姉妹種」が存在しなかったため、進化生物学的な解析が遅れているのが唯一の弱点だった。
今回、同研究グループは、長らく求められてきたC. elegansの姉妹種を沖縄県石垣島のイチジクの実から発見し、Caenorhabditis inopinata(C.inopinata)と名付けた。これは、これまでC.elegans研究の制限要因となっていた「姉妹種不在問題」を解消する極めて重要な発見といえる。この新しい線虫は、体サイズが C.elegansと比較して2倍以上大きい、イチジクおよびイチジクコバチを生育環境として好む(C.elegans は多様な環境で生育可能な自由生活性)などの興味深い差異がある。これは姉妹種としては驚くべき違いである。同グループは、さらにC.inopinataの全ゲノム解読を行い、遺伝子操作技術を確立した。
本成果により、今後、C.inopinataが新たなモデル生物として広く利用され、C.elegansと併用して研究を進められることで、動物の進化や多様性を生み出すしくみなど、様々な分野で生命現象の理解がさらに深まることが期待される。