順天堂大学大学院の谷川武主任教授らの共同研究グループは、約13年間(最長20年間)の前向き追跡研究で睡眠時無呼吸が循環器疾患発症リスクを上昇させることを明らかにした。
国内での睡眠時無呼吸の治療には経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP療法:マスクから空気を送り気道閉塞を防ぐ治療法)が用いられるが、この治療は中等症以上でない場合は保険適応にならない。その理由として、軽症の睡眠時無呼吸についてのリスクの強さが十分に検討されておらず、また、アジア人を含む国内のエビデンスが少ないことが挙げられる。軽症の睡眠時無呼吸は経過観察とされるが、それにより潜在的な循環器疾患の発症リスクを放置してしまっている可能性がある。
共同研究グループは、大阪府八尾市、茨城県筑西市、秋田県井川町の3地域で8年間かけて、全対象者への飲酒や喫煙などの生活習慣や血圧や糖尿病などの併存に関する調査を行った。睡眠時無呼吸のスクリーニング検査を5,313人(40歳から74歳)に実施し、その後の循環器疾患発症リスクについて検討した。
その結果、睡眠時無呼吸はCPAP治療の保険適応外と判断される場合(軽度)であっても、ラクナ梗塞(脳実質内の細い血管に生じる小梗塞)や心疾患の発症リスクを増加させること、今後の循環器疾患発症予防において睡眠時無呼吸の早期発見・早期治療が重要であることを明らかにした。
今回の研究成果は、睡眠時無呼吸治療の保険対象を検討するための貴重なエビデンスとなるもの。日本における睡眠時無呼吸は潜在患者が300万人とも言われ、軽症を含む睡眠時無呼吸の治療は国内の循環器疾患予防に大きな影響を与えるとしている。