大阪大学大学院の研究グループは中京病院と共同で、重症熱傷患者の血液中の3種類のタンパク質が生存死亡(転帰)に関わっていることを明らかにした。それらを用いて患者を分類化し、死亡率別に3つのサブグループを同定した。
重症熱傷による死亡者数を減らすには、生体内での変化を解明する必要がある。近年の測定機器や統合解析(プロテオミクス)技術の発達により、一度に多くのタンパク質を網羅的に解析できるようになった。しかし、これまで重症熱傷患者の血中タンパク質の網羅的な測定やプロテオミクスは行われていなかった。
今回、研究グループは、重症熱傷患者(熱傷深度Ⅱ度以上の熱傷範囲20%以上)の受傷日の血液(血漿)を用いて、質量分析法により642種類のタンパク質を測定し、生存群と死亡群間で比較した。
その結果、受傷日の時点で生存死亡(転帰)に関わっている可能性のある10種類のタンパク質を同定。その中でもHBA1、TTR、SERPINF2というタンパク質がより強く生存死亡(転帰)に関わっていた。さらに、この3種類のタンパク質の濃度に基づいて重症熱傷患者をフェノタイピング(臨床的特徴による分類化)し、生存死亡(転帰)と関係のある3つのサブグループ(フェノタイプ)を同定した。
その結果、HBA1の発現量が高くTTRやSERPINF2の発現量が低いサブグループは死亡率がとても高く、TTRやSERPINF2の発現量が高いサブグループは受傷から28日の時点でほとんど死亡していなかった。
これら3つのタンパク質は重症熱傷患者において身体内での変化を評価できる予後予測マーカーとなり得るだけでなく、フェノタイプに応じた新たな治療戦略や治療薬開発への応用が期待されるとしている。