浜松医科大学医学部の小田切圭一准教授、静岡県農林技術研究所の山口亮上席研究員らの研究グループは、林業作業員同士の接近を警告する注意喚起アプリケーションを開発した。林業作業中の労働災害を防ぐためで、社会実装試験を経て実用化を目指す。
浜松医科大学によると、労働者1,000人当たりの死傷者数を示す死傷者千人率は全産業平均が2.3なのに対し、林業は25.5と極めて高い。小田切准教授と山口上席研究員が林業の労働安全衛生向上を目指して共同研究したところ、林業作業員は非常に強いストレスと疲労にさらされていることが分かった。これらストレスや疲労が注意力、判断力の低下を招き、労働災害の死傷者を増やす結果につながっているとみている。
研究グループによると、労働災害の発生原因の一つとして、作業者の周囲が木に覆われ接近者を視認しにくいことがあげられる。そこで林業作業員が持つ携帯電話が接近すると、警告音と振動を発するアプリを開発した。警告音と振動は他の林業作業員が近づくにつれ、3段階で強度が上がり、より接近したことが分かるようにしている。
実際に森林でアプリをテストした結果、立ち木の数や太さによる電波の減衰があることが明らかになった。このため、警告音は作業する森林ごとに設定し直す必要がある。研究グループはあらためて社会実装に向けた試験を行い、さらに問題点を洗い出してアプリに修正を加える方針。
参考:【浜松医科大学】林業作業従事者の労働災害予防を目的とした、作業者接近時の注意喚起アラームアプリケーションを開発しました(PDF)