東京大学先端科学技術研究センターの江崎貴裕特任講師、井村直人特任研究員、西成活裕教授、三井不動産株式会社の藤塚和弘氏らの研究グループは、高層マンションや高層オフィスビルでのドローンによる垂直配送システムを考案し、その有効性を数理モデルで明らかにした。
高層ビルでのエレベーターのみに頼った配送は、増加する飲食ケータリングサービスや通販による宅配需要から、今後は期待される時間内にモノを届けられなくなるリスクを抱えている。また、災害時にエレベーターが利用できなくなった場合は、物流インフラへの懸念もある。
そこで、東京大学と三井不動産は、高層ビル建物内にドローンが垂直飛行できる専用空間を設置した新たな配送システムを考案した。この有効性を検証すべく、荷物の脱着、上下飛行、バッテリーの交換などの配送プロセスと、配送需要、ドローンの台数などを考慮して配送のパフォーマンスを計算する数理モデルを構築した。分析の結果、一定の需要レベルまではエレベーターよりもドローンを活用した方が、早く、かつ少ない消費電力で配送が可能となることがわかったとしている。「大量輸送が得意なエレベーター配送」と「個別の即時対応が得意なドローン」というように、一定のシーンでは、ドローンを活用するメリットが存在することが示されたといえる。
本研究成果は、待ち時間が長くなりがちなエレベーターでの配送に対する解決策となるだけでなく、災害時に消費電力を抑えて生活必需品の配送を行うなど、建物内の物流に有力な選択肢を与えると考えられる。
今後は、実機を用いたさらなる検証を行うとしており、ドローンとエレベーターを協調させた新たな建物内物流実現の可能性も期待される。