北海道大学大学院の佐藤陽祐准教授らの研究グループは、気象庁気象研究所と共同で、冬季に北海道で降る雪の特徴の将来変化を数値シミュレーションで計算することに成功。将来北海道で降る雪が、現在本州で降る雪のようになることを初めて明らかにした。
これまでの数値シミュレーションによる雪の将来変化に関する研究は、雪崩の発生や雪質に深く関わるとされる降雪粒子(降ってくる雪)の特徴を扱っていない。ほとんどが降雪量や積雪量の変化といった雪の総量を対象としていた。
そこで研究グループは、降雪粒子の成長過程を直接追跡できる独自開発モデル(成長過程追跡モデル)と、北海道大学のスーパーコンピュータ「グラン・シャリオ」を用いて、降雪粒子の特徴を考慮した数値シミュレーションを実施。降雪粒子の特徴が、現在と温暖化が進んだ将来とでどう変わるかを調べた。
その結果、主な成長過程について、現在は、降雪粒子は柱状結晶や板状・扇状結晶が形成される昇華成長(周囲水蒸気の取り込みによる成長)だが、温暖化した将来は、雲粒付き粒子(大気中氷粒子に水滴が付着してできる降雪粒子)や霰が形成される雲粒捕捉成長(水滴との衝突・併合による大気中氷粒子の成長)になると判明。これは現在の本州(主に北陸地方〜東北地方の日本海側)の降雪と類似する。現在のさらさらとした雪質の北海道の降雪が、将来的に現在の本州で降るような雪になることを明らかにした。
降雪粒子の成長過程を直接計算することで、降雪粒子の特徴の予測や、降雪粒子の将来変化の計算が可能になる。今後の研究により、雪氷災害の予測による防災や、雪質分析による観光業への貢献が期待されるとしている。