1882年創立の早稲田大学は、2032年に150周年を迎える。前総長時代に「WasedaVision150」を策定し、現総長の田中愛治氏にバトンタッチして以降、その内容を「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」にブラッシュアップした。「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」では、創立150周年のその先にある未来も見据えたうえで、「早稲田大学のあるべき姿」を明確にした。グローバルリーダーを育成し、世界人類に貢献する大学への進化を目指す早稲田大学のキャリア支援戦略について紹介する。

 

写真提供:早稲田大学

未来のあるべき姿を明確にし、人間的力量を備えたグローバルリーダーを育成

 初代総長・大隈重信の時代から「学問の独立」「学問の活用」「模範的国民の造就」を建学の精神に掲げ、世界人類に貢献する学生の育成・輩出に尽力してきた早稲田大学。前総長の鎌田薫氏が創立150周年を迎える2032年を視野に入れ、2年がかりで構築したのが「WasedaVision150」である。「WasedaVision150」では建学の精神を継承し、4つのビジョン 「世界に貢献する高い志を持った学生」「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究」「グローバルリーダーとして社会を支える卒業生」「世界に信頼され常に改革の精神を持って進化し続ける大学」を創立150周年へ向けたビジョンとして掲げ、13の核心戦略を打ち出した。

 その後、田中愛治氏が第17代総長に就任。田中総長が「WasedaVision150」を改めて見直し、「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」を打ち出した。同ビジョンでは創立150周年の先にある「未来」も見据えたうえで、「大学としてのあるべき姿」をより明確にした。

 「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」では、建学の精神に掲げた「学問の独立」「学問の活用」「模範的国民の造就」を「研究の早稲田」「教育の早稲田」「貢献の早稲田」と現代の言葉に置き換え、「研究教育活動を通じて、進んで世界人類に貢献し続ける大学」であり続けることをパーパスとした。そして、世界人類に貢献しようとする学生にとって、2040年までには日本で、2050年までにはアジアで最も効果的な教育を受けられる大学になることをビジョンに掲げた。田中総長は、世界人類への貢献を「グローバルリーダーとして、大小かかわらずあらゆる国や地域でその社会に貢献していくこと」と捉えている。現在、早稲田大学は「世界人類に貢献する大学」に進化すべく、学生や卒業生、支援者とともに150周年記念事業を進めている。

 そして早稲田大学キャリアセンターは、「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」で掲げる「貢献の早稲田」を牽引する存在である。「本学は『人間的力量』を持った人材の育成を教育・研究のポリシーに掲げており、キャリアセンターでは学生が多様な価値観に触れ、多様な経験をしながら、自らのキャリアプランを描いていけるようサポートしています」と、キャリアセンター長の野地整氏は語る。人間的力量とは答えのない問題に立ち向かう「たくましい知性」と、さまざまな状況で多様性を受け入れる「しなやかな感性」であり、「授業や課外活動こそ大学生活の最も大切な活動である」との考えを軸に、多様な経験を積む機会を用意している。

 年間80件以上のイベントを実施し、15,000 件以上の個別相談に応じているほか、正課外のプログラムを多数提供。その種類は、ボランティアから企業・自治体とのワークショップまで多岐にわたる。中でも野地氏は「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」の活動の一環として、職員が学生と協働しながらさまざまなプロジェクトを進める「人間的力量の増進プロジェクト」の座長を務めており、「他者と関わり、実践的な経験ができる課外活動を通じて、自分自身の強み・弱みを認識し、人間的力量を育んでほしい」と強く願っている。
「キャリアセンターでは、学生一人ひとりが自身の興味・関心に基づき、多様な経験を積めるような機会を多数用意しています」とキャリアセンター長の野地整氏。

学生の多様なキャリア選択をかなえる「大学×卒業生ネットワーク」

 「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」が打ち出すビジョンのひとつに、「卒業生との生涯に渡る連携強化」がある。「卒業生との連携強化は、キャリア支援においても非常に重要です」と野地氏。中でも卒業生訪問を重視しており、就職活動の一環として行うだけでなく、1・2年次から卒業生との出会いや語らいの場を得る機会を提供したいと考え、キャリアセンターでも卒業生ネットワークの強化を進めてきた。

 「早稲田大学には68万人の校友がおり、世界各地でその力を発揮しています。これまでは、同窓会組織である校友会と連携して卒業生を紹介していましたが、紹介できる卒業生 に偏りがあるなどの課題がありました。そこで、大学×卒業生ネットワークのモデルケースを構築すべく、2023年秋にビズリーチ・キャンパスを導入しました」と野地氏。これまで紹介が難しかった若い世代の卒業生とつながることができる点に加えて、安全性や利便性の高さなどが導入の決め手になったという。

 「卒業生訪問は、学生が多様な価値観に触れながら人間的力量を育むうえでも重要な機会となります。在学生には、ぜひビズリーチ・キャンパスで興味のある分野で活躍している卒業生と出会い、訪問を積み重ねることで人間的力量を高めていってほしいですね」と今後への期待を語ってくれた。
「正課の授業で吸収した知識や理論を、課外活動で実践し、失敗を恐れず活用してほしい。その経験が、社会で活躍し、貢献する土台となります」(野地氏)。

  1. 1
  2. 2

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。