神戸大学大学院医学研究科の大片祐一特命准教授らは、国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を使って学童期の患者から副腎腫瘍を摘出する手術に成功した。ヒノトリを使用した手術の成功は世界で初めて。ロボット支援手術が小児に導入されることにより、小児外科患者の選択肢が広がると期待されている。
神戸大学によると、ヒノトリは重工業メーカーの川崎重工業と医療機器メーカーのシスメックスが合資して設立したメディカロイドが開発した国産初の手術支援ロボットで、2020年から販売している。手術を実施するアームが人の腕に近い形に設計されている。
ヒノトリを使用した手術は神戸市中央区の神戸大学医学部付属病院であり、対象患者の画像データを用いてシミュレーションして安全に機能することを確認したうえで、大片特命准教授が執刀した。患者の術後の経過は良好だという。
手術支援ロボットは手振れがなく、人間より細かい操作が可能になるうえ、3Dによる高精細画像で手術でき、出血量を抑えて合併症を軽減できると期待されている。このため、世界各国で開発が続き、手術の実施件数も増えている。
一般に成人の胸腔や腹腔を想定して開発されているため、小児患者対象の手術に使うときは操作範囲の制約や安全性に課題があるとされる。さらに、小児に保険適用される術式が少なく、小児対象の手術だけで医療施設の経営を維持する手術回数をまかなえないことも、普及の妨げになっていた。