マウスも人間と同じように、次に食べるものの好き嫌いに応じて、その前に食べるものの量を計画的に調節できることがわかった。東京大学大学院農学生命科学研究科の喜田聡教授らによる研究グループが発見した。

 本研究グループは、人が日常するような計画的な食行動が、マウスでも観察されるかを調べたという。マウスに通常餌を与えてから好きな食物(チーズ、スイートチョコレート)あるいは苦手な食物(ビターチョコレート)を与えることを繰り返すと、チーズあるいはスイートチョコレートが与えられる場合には、その前の通常餌の摂食量が減っていき、逆に、ビターチョコレートを与えられる場合には通常餌の摂食量が増えていくことがわかった。つまり、マウスも我々が日常的におこなっているように、その次に何を食べるかを計算しながら、計画的に食事することが明らかとなった。

 我々人間は、「別腹食い」、「ストレス食い」、「やけ食い」など、本来生存には必要ではない不思議な食行動を示す。このような食行動は、生命維持の必要性に従って食行動が制御される「代謝制御」とは別に、それぞれの食物に対する嗜好性に応じて食行動が制御される「認知制御」の一つだ。

 今回マウスでも、認知制御の一端が再現されたと言うことができるだろう。今後の研究継続により、後に食べる物を考慮して食事するといったヒトの計画的食行動のメカニズム解明に前進することが期待される。また、この計画的食行動の破綻が、過食症や拒食症などの摂食障害の一因になると考えられるため、今回の発見は摂食障害の理解に繋がることも期待される。

論文情報:【Neuropsychopharmacology Reports】Changes in food valence of regular diet depending on the experience of high and low preference food

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。