九州大学病院別府病院内科の山崎講師(当時)らの研究グループは、別府市内の温泉施設にて、夜間の温泉入浴に関するアンケートにより、65歳以上の回答者の温泉利用後の収縮期と拡張期血圧の低下割合は65歳未満の回答者よりも有意に大きいことを明らかにした。
収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上の高齢者では入浴時の事故の危険性が正常血圧の高齢者の3~4倍と報告されているが、温泉利用客は必ずしも入浴前後で血圧を測定していない。
そこで研究グループは、別府市内温泉施設での入浴前血圧測定を恒常化し、収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上の温泉客による事故の予防を目指した。さらに、温泉入浴できなかった血圧コントロール不良の温泉客に対し、安全な温泉利用と高血圧などの生活習慣病の早期発見と早期治療につながるよう温泉施設と同病院との相互協力体制の確立を試みた。
また、夜間の温泉入浴に関するモバイルアプリと紙アンケートの使用割合を前向きに評価した。参加総数1116人中アプリ562人、紙アンケート556人で、65歳以上の回答者の99.3%が紙アンケートを使用した。
回答では、65歳以上の温泉利用後の収縮期と拡張期血圧の低下割合は65歳未満よりも有意に大きかった。夜間の温泉入浴前後の血圧低下割合への影響を確認すると、年齢65歳以上、投薬中の高血圧、不整脈、鬱病、塩化物泉の利用が独立して有意な相関を認めた。
研究グループは、夜間の温泉入浴は65歳以上の血圧低下に有効である可能性があるが、高血圧既往者は服用中の降圧薬などの影響で事故の可能性もあり、かかりつけ医と相談の上、安全な温泉入浴が望まれると述べ、今後さらに調査が必要としている。