千葉商科大学は、2023年に日本で5番目となる「フェアトレード大学」に認定された。認定を受けるためには数々の基準をクリアしなければならない。このとき推進力となったのは学生たちの活動だったという。フェアトレードをはじめとするエシカル消費の普及に取り組む「CUC エシカル学生クラブ」誕生の経緯や、活動の成果に迫った。

 

エシカル学生クラブの原点

 今回お話を伺ったのは、「CUC エシカル学生クラブ」(以下、エシカル学生クラブ)の担当教員であり、サービス創造学部の滝澤淳浩教授。エシカル学生クラブ誕生のきっかけとなったのは、2017年に発足した学長プロジェクトだったという。

 学長プロジェクトは、原科幸彦教授が千葉商科大学の学長に就任したことを機にスタート。「会計学の新展開」「CSR研究と普及啓発」「安全・安心な都市・地域づくり」「環境・エネルギー」の4分野で、教育・研究活動や社会貢献を行う。エシカル学生クラブの活動は、「CSR研究と普及啓発」の一環として位置づけられている。

「千葉商科大学の建学の精神は、時代に応じて社会課題の解決を牽引する『治道家』を育成することです。そのためにも商業道徳をしっかり教育し、高い倫理観を持つ学生を育てなければなりません。そこで倫理的な商いには欠かせないエシカル消費の普及啓発に取り組みはじめました」

 学長プロジェクトをどう具現化するか、副学長の今井重男サービス創造学部教授と検討を進めるなかで、滝澤教授は自身が担当する同学部の「コミュニティカフェ・プロジェクト」に目をつけた。

「このプロジェクトでは学生が主導となって、学内外の人々が交流できるカフェを開催します。ここで提供しているコーヒーや紅茶をフェアトレード商品にすることで、新たな付加価値を与えられないかと考えました。来店した方々にもエシカル消費の普及啓発ができるよう、まず学生たちにフェアトレードなどの重要性を教えています」

 コミュニティカフェ・プロジェクトをきっかけに、エシカル消費に興味を持った学生もいる。

「オープンキャンパスでもコミュニティカフェ・プロジェクトでブースを出し、フェアトレードのアイスコーヒーやオーガニックのジュースなどを提供しました。その結果、活動に興味を持って本学に入学し、新たにプロジェクトメンバーになってくれた学生もいます」

学生主体でフェアトレード大学に認定

 コミュニティカフェ・プロジェクトから始まったエシカル消費の普及活動。次にめざしたのは千葉商科大学がフェアトレード大学の認定を取得することだ。そのためには「フェアトレード大学認定基準」を満たさなければならないが、ここで大きなハードルが立ちはだかった。

「現在は緩和されたものの、当時フェアトレード大学に認定されるためには『大学が認定している団体が2年間活動を継続している』という基準がありました。コミュニティカフェ・プロジェクトのような講義ではなく、自主的に課外活動をする団体が必要だったのです」

 こうした経緯から2020年7月にエシカル学生クラブが設立された。初期メンバーはコミュニティカフェ・プロジェクトの学生たちだったが、だんだんとほかの学部からも参加者が集まるようになったという。

 設立当初の目標のひとつは、2030年までにフェアトレード大学認定を取得すること。基準をひとつひとつクリアしようと、学生主体でさまざまな活動を行った。たとえば学内外のイベントでフェアトレードの啓発活動をする、学食・大学生協・大学備品にフェアトレード商品を導入するなどの活動だ。「千葉商科大学フェアトレード大学憲章」を制定する際も、学生が草案を作ったという。

「千葉商科大学フェアトレード憲章の案はすべて学生が考えました。私たち教員は内容の確認をしたくらいで、ほとんどノータッチです。体育に使うフェアトレードボールの購入を大学に提案するときも、物品の選定から企画書作りまで学生が行いました。エシカル学生クラブの活動は、実践を通したよい学びの機会になっていると思います」

 学生の主体的な活動により、2023年4月にフェアトレード大学として認定された千葉商科大学。現在もエシカル学生クラブは精力的に活動している。学内では毎年「CUC ETHICAL DAYS」を開催してエシカル消費の認知拡大に貢献。ほかにも地域のイベントに参加してワークショップやフェアトレード商品の販売を行っている。現代表を務めるサービス創造学部3年の櫻井理智さんは、活動への想いを次のように語った。

「フェアトレードの商品は強要して買わせるものではありません。まずはフェアトレードという名前だけでも知って、興味を持ってくれたらと思い活動しています。これまでも私たちの活動をきっかけに、地域の方がフェアトレードに関心を抱き、実際に商品を購入するなどの行動につなげてくれました。こうした成果は、私たちの喜びにもなっています」

エシカル学生クラブから地域を変えたい

 エシカル学生クラブの活動は、地域にも影響を与えている。近年ではフェアトレードタウン認定をめざす千葉市からの依頼を受け、「フェアトレードタウン推進協議会」のメンバーに選出された。会合に参加するほか、千葉市のイベントに赴いて普及啓発を行う。

 滝澤教授は、「いつかは千葉商科大学がある市川市もフェアトレードタウンにしたい」と目標を口にした。

「ほかのフェアトレード大学では、まず自治体がフェアトレードタウンに認定され、その後大学で活動を始める事例が多いです。しかし本学では、大学がきっかけとなって地域のエシカル消費を推進しようと活動を続けています。いつかは大学発で近隣地域を巻き込んでフェアトレードエリアにする、といった日本初の快挙も成し遂げたいです」

 フェアトレードから始まったエシカル学生クラブの取り組み。近年はますます幅を広げており、植樹や海岸清掃といった環境保護活動や、地域でSDGsを実現するための支援なども行っている。今後もエシカル消費の普及啓発を多角的に実践する予定だ。

「可能であれば、学生が途上国の視察に行けるような環境も整えたいです。大学時代にしかできないことを経験し、『このままではいけない』と感じて行動を起こせる学生になってほしいです」

千葉商科大学 サービス創造学部

滝澤 淳浩教授

明治大学商学部卒。山一證券株式会社、加賀電子株式会社での勤務を経て、2015年4月に千葉商科大学サービス創造学部准教授に就任。2024年4月より同大学同学部教授に就任。

 

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