2024年に創立125周年を迎えた実践女子学園は「女性が社会を変える、世界を変える」を建学の精神に掲げ、女性の社会的な自立が難しかった時代に女子教育をスタートさせた。以来、校名に「実践」とあるとおり、社会を生き抜く実践的な力を授けるべく、さまざまな取り組みを進めてきた。その一つが、2021年に設立された社会連携推進室が推進している「社会連携プログラム」である。今回は、2024年度に実施した実践女子大学の社会連携プログラムについて紹介する。

 

課題解決型の社会連携プログラムを通じて、社会で活躍する「実践力」を育む

 実践女子大学の主な社会連携プログラムは、学生が社会や企業の課題に取り組む実践型のプロジェクトである。2021年に社会連携推進室を設立し、日野と渋谷の両キャンパスでPBL(課題解決型学習)を実施している。授業だけでなく、課外活動(授業外活動)も実施しており、キャンパスや学部・学科の枠組みを超えたプロジェクトも多い。

 社会連携プログラムに参加することで、学生はこれまで学んできたことが社会でどう役に立つのか、社会に対してどのようなことを実践できるかを具体的にイメージできるほか、多様な価値観に触れることで新たな学びや気づきも得られる。そして社会連携プログラムで学んだことを持ち帰り、大学での学びに活かしていくプロセスを何度も経験することで、多様な人々と協働して社会を築き上げていく「実践力」を養うことができる。

企業協力の元、地域課題の解決や商品化までさまざまな取り組みに挑戦

 2024年度も、さまざまな企業や自治体協力の元、数多くの社会連携プログラムを実施した。その一部を紹介しよう。

 国際学部国際学科の授業「海外の日本文学」(担当:大塚 みさ教授)では、セガサミーホールディングスとの特別コラボを実施。セガサミーホールディングスの社員が日本で実際に行われてきた「文化の盗用」について紹介した上で、学生たちは「文化の盗用を避ける」という視点からゲームの企画立案に取り組んだ。

 人間社会学部人間社会学科の「演習ⅡB」(粟津教授担当クラス)では、サイバーエージェントのAIクリエイティブ部門を統括する川越寛之氏による特別授業が2回に渡って実施された。川越氏は、サイバーエージェントが広告のすべてをAIで制作しており、効果予測や広告文作成などさまざまな場面でAIを活用していることについて紹介した。学生たちは複数の生成AIモデルを用いて文章や画像制作に挑みながら、「AIの適切な活用」について学んだ。

 2回目の授業では、学生たちが「これから迎える冬の休暇におすすめの活動、遊びを紹介する」をテーマにプレゼンした内容について、アドバイスを交えながらコメントをした。

 複数の企業担当者が学生をサポートし、課題解決の実践を目指す授業もある。文学部の「キャリアプロジェクト演習」(担当:深澤晶久教授)は、企業から与えられた課題に取り組むのではなく、学生が自ら取り上げたい社会課題を見つけ、解決策の実践までを目指すというもの。テーマは「渋谷×社会課題」で、大手企業3社の各担当者がメンターとなって、各グループの取り組みをサポートした。渋谷のオーバーツーリズムに注目したグループがSNSでの情報発信を皮切りに、新たな取り組みにつなげていくなど、各グループが「実践」のフェーズまでやりきった。

 次に紹介するのは、商品化につなげた事例だ。

 人間社会学部現代社会学科(現・ビジネス社会学科)の篠﨑香織教授のゼミ生2人は、就職やインターンシップを意識し始めた頃、就職活動で履く機会の多いストッキングに着目した。そして、「緊張してしまいがちな就職活動を安心して乗り切れるように」と考え、就活応援ストッキングを考案した。コンセプトを定め、オンラインアンケート調査を実施してコンセプトが適切であるかを見極めた上で、企業と交渉。パンティーストッキングの製造・販売卸手掛ける奈良県の福西メリヤスの協力を得て、契約にこぎつけた。会計学(担当:蒋 飛鴻教授)のゼミ生に協力してもらって原価計算を行い、損益分岐点を出して価格と販売個数を設定。マーケティングが専門の井上綾野准教授による授業「広告・PR論」の履修者に協力してもらってPOPを制作するなど、学内外のさまざまな人を巻き込みながら、商品化を目指した。
実際に販売された学生考案のストッキング

地域をもっと元気に。地元企業や自治体との社会連携も多数実践

 地元企業や自治体との連携による取り組みも多い。

 生活科学部生活環境学科の滝澤愛准教授のゼミの学生は、廃棄処分となる多摩都市モノレールの使用済み制服などを素材に利用して、50年代ファッションをモチーフに服を制作。学生自らモデルとなり、ファッションショーを開催した。

 創立125周年記念特別事業として開催した「JISSENマルシェ」では地元の人気店を中心に多数出店。これも社会連携の取り組みの一つである。中でもグルメフェスは共通教育科目「実践プロジェクトc」で、学生たちが「地域の食の魅力を紹介する」を提案したことがきっかけとなって、実現に至った。
大学関係者だけでなく、地域の方々も集まり大賑わいとなった「JISSENマルシェ」

 日野市との連携では、すべての子どもの健やかな成長を切れ目なく支援する総合支援拠点「子ども包括支援センターみらいく」のオープンにあたって、生活科学部生活環境学科の学生がイメージキャラクター「ぺたぺたさん」をデザインした。また、全館オープニングイベントの当日には、日野市の要請に応えて生活文化学科、食生活科学科、現代生活学科の3学科の学生が参加し、ブース運営を担当した。
実践女子大学の学生がデザインしたロゴ

学園全体での取り組みやグローバルビジネスを体験できるプログラムも

 実践女子大学は以前から社会連携の取り組みを進めてきたが、個々の授業での取り組みが多かったため、これを学園全体の取り組みとするために設立されたのが、社会連携推進室である。そのため、設立以降は、一つの取り組みが実践女子学園中学校・高等学校など学園全体に派生していった事例が少なくない。

 例えば、日本相撲協会との包括的連携による取り組み。2017年12月、実践女子大学は日本相撲協会と包括的連携協定を締結し、「相撲という日本の伝統文化継承と発展に、学生である自分たちがどう寄与していくか」をテーマに連携活動を進めてきた。

 協定締結以来、毎年、行っているのが相撲ボランティアへの参加だ。3年前から高校生も参加しており、2024年度は相撲グッズの販売補助を行った。また、実践女子大学と日本相撲協会社会貢献部との共催で、ゴミ拾いとスポーツを融合させた日本発祥の競技「スポGOMI in 国技館」も実施している。

 このほか、グローバル化にも重点を置いている実践女子大学では、海外インターンシップの機会を提供している。大学があらかじめ認めたグローバルインターンシップに参加し、一定の条件を満たすと単位付与対象となる。

 グローバルインターンシップは長期期間中に実施するプログラムと、授業期間中に実施するプログラムがある。長期期間中に実施するプログラムの期間は1~8週間程度。インターンシップ先はアメリカ、イギリス、ベトナム、カンボジア、オーストラリアなどで、プログラムは「研修型」「就業型」「課題解決型」に分かれている。

 一方、授業期間中のプログラムは7~14週間と期間が長い。インターンシップ先はベトナム、タイ、カンボジア、フィリピン、オーストラリアで、長期期間中に実施するプログラムよりも難易度が高いが、海外で働くことをより明確にイメージすることが可能だ。

 このように、実践女子大学は社会とつながる実践的な学びの機会を提供し続けてきた。これら一つひとつの取り組みが花を開き、98.1%(2024年3月卒業生)と高い就職率を誇っている。

 学生一人ひとりが求めるキャリアを形成し、社会で活躍できる「実践力」が身につくよう、同学はこれから先も社会連携を主軸に置いた取り組みを推進していく。社会連携プログラムに参加して社会課題解決に取り組んでいる同学の学生たちが、建学の精神に掲げた「女性が社会を変える、世界を変える」を実践する日が訪れるのは、そう遠くないだろう。

実践女子大学

優しさと強さを育む実践教育。人と社会を支える力へ

実践女子大学は、教育理念「品格高雅にして自立自営しうる女性の育成」を掲げ、社会で活躍するための能力を身に付けた自立した女性を育成。「都心の渋谷」「自然豊かな日野」の2つのキャンパスで、時代に合わせた実践的な学びを提供しています。演習(ゼミ)や実験・実習など、少[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。