北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻の河端将司講師、同大学院医療系研究科博士課程2年の内田悠登さんらの研究チームは、くまざわ整形外科(熊澤祐輔医師)、コニカミノルタ株式会社らと共同で、足首の捻挫において靭帯安定性が回復するまでの期間を超音波画像で追跡評価した世界初の研究成果を発表した。結果として、靭帯の構造的な安定性の回復には、約2~6週間を要することが明らかとなった。

 足関節(足首の関節)の捻挫は、スポーツ現場で最も多く発生する外傷のひとつだが、明確な競技復帰の基準がないまま復帰する例が多く、再発率は50%を超えるとされる。足首の不安定性を軽視したまま競技に復帰すると、膝・股関節・腰などへの二次的な障害を引き起こす恐れもある。

 本研究では、「見えない靭帯の回復過程」を“見える化”するアプローチとして、初回の足関節捻挫患者101名を対象に、受傷から回復に至るまでの関節の安定性変化をエコー(超音波検査)を用いて経時的に追跡した。

 ストレステスト(関節に特定の方向から負荷をかける検査)中の足関節の不安定性(靭帯のゆるみ)をエコーで測定したところ、外傷がない側の足と同等レベルに回復するまでに、Grade 1(靱帯の損傷はあるが断裂はない)では約2週間、Grade 2および3(靭帯の部分断裂および完全断裂)では約6週間かかる傾向が確認された。従来「1週間で競技復帰可能」とされてきた一般的な考えに反する重要な発見である。

 エコーで関節の状態を定量的に可視化することは、捻挫を繰り返すことなく安全に競技復帰するための最適な復帰時期の提案に役立つと期待される。加えて、河端講師は、AIによる診断補助を活用し、より正確な復帰判断を行う研究も進めているとしている。

論文情報:【Journal of Experimental Orthopaedics】Severity-dependent recovery time in acute lateral ankle sprains: An ultrasonographic assessment of talofibular displacement

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