東京農業大学、千葉県立中央博物館、首都大学東京、NPO法人「森は海の恋人」(宮城県気仙沼市)からなる研究グループが、気仙沼市の河川でエビ類(十脚目甲殻類)の新種を発見。国内在来の淡水性種として2種目になる。
研究グループは、東日本大震災の津波と地盤沈下によって創出された湿地とその周辺水域の保全を主目的とした調査の一環で、2012年から宮城県気仙沼市において底生動物(ベントス)相のモニタリングを行っている。その過程で、東京農業大学の加藤木侑一博士後期課程1年生が、スジエビ属に分類されるが、これまでに報告のない形態的特徴を持ったエビを採集した。
このエビは国内に広く分布するスジエビ属のスジエビ、いわゆる「川えび」に形態的に酷似するが胸脚のハサミ部がスジエビよりも長い。千葉県立中央博物館の駒井智幸博士が標本を精査した結果、新種と判明した。結果は分子系統解析からも支持されている。
千葉県立中央博物館と国立科学博物館が所蔵する標本、さらに日本DNAデータバンク(DDBJ)登録の塩基配列情報から、本新種は北海道から兵庫県までの日本海側と青森県から宮城県までの太平洋側に分布することが分かった。学名は北海道から東北地方という「北方の」分布を考慮し、「キタノスジエビ(Palaemon septemtrionalis)」とした。
スジエビ属のエビは世界で87種、日本国内では在来11種と外来種チュウゴクスジエビの計12種が報告されている。このうち河川や湖沼に生息する淡水性種はチュウゴクスジエビを除けばスジエビだけで、今回発見したキタノスジエビは2種目の国内在来の淡水性種となる。今回の成果は進化的観点・保全的観点から興味深く、今後はその生態特性を解明していくとしている。