国立環境研究所と東邦大学の研究チームは東京電力福島第一原子力発電所の事故による福島県内の避難指示区域とその周辺のカエル生息データを公開した。ニホンアマガエルなど8種の生息が確認され、うち3種について分布データを可視化している。

 国立環境研究所によると、研究チームには同研究所福島支部の吉岡明良主任研究員、生物・生態系環境研究センターの深澤圭太主任研究員、東邦大学理学部の柗島野枝博士研究員らが参加した。

 避難指示区域では住民の避難により、多くの水田が失われた。研究チームはこれが水田をすみかとするカエルの生息にどのような影響を与えたのかを調べるため、避難指示区域とその周辺の公共用地52地点に毎年5月中旬から7月中旬にかけて録音装置を設置、オスがメスを呼ぶ鳴き声を集めた。

 2014年と2015年に集めた音声を確認したところ、ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、ダルマガエル、ウシガエル、ツチガエル、モリアオガエル、タゴガエル、カジカガエルの計8種の生息が確認された。このうち、記録データが多かったニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、ダルマガエルの3種については、可視化した分布データを作成した。

 ニホンアマガエルとシュレーゲルアオガエルは水田がない避難指示区域の半数以上の地点で出現しているが、水田への依存度が高いと考えられるダルマガエルは出現地点が限られている。

論文情報:【Ecological Research】Acoustic monitoring data of anuran species inside and outside the evacuation zone of the Fukushima Daiichi power plant accident

大学ジャーナルオンライン編集部

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