2025年5月12日、金沢工業大学情報デザイン学部の経営情報学科、環境デザイン創成学科では、ITを活用した知的障がい者の移動や就労の自立支援に向けて、保健医療福祉団体GENESIS株式会社および株式会社ポタジェと包括共同研究に関する契約を締結した。学生のプロジェクトデザイン活動(卒業研究)の一環として、知的障がい者が活動する現場で実際のニーズ等を把握し、活動具体的な研究テーマを立案、実践していく予定。
金沢工業大学 情報デザイン学部 経営情報学科の徳永雄一研究室(専門分野:コンピュータアーキテクチャ、データマイニング)では、ITを活用した知的障がい者の移動や就労の自立支援の研究を、GENESIS株式会社と共同で進めている。
知的障がい者や発達障がいや鬱病、PTSDなどを持つ人々には聴覚過敏者が多いとする⾒解もあり、それが原因で外出ができない課題に着目。音情報処理により聴覚過敏を抑制する研究と、通勤や就労を介護者が遠隔支援できるウェアラブルデバイスの開発に取り組んでいる。
工学分野と福祉分野のビジネスにおける「工-福」連携はあまり例がない。今回の包括共同研究は、さらに広い範囲で研究を促進するため、石川県内で障がい者就労を受け入れているハーブ園「ペザン」を運営する株式会社ポタジェ、金沢工業大学は経営情報学科の石原正彦教授(専門分野:地理情報科学、統計解析、技術経営)および環境デザイン創成学科の土橋喜人教授(専門分野:交通バリアフリー、国際協力、障害と開発、障害者福祉)に声をかけ、2事業団体と3研究室で協議し、締結した。
包括共同研究に向けた協議では、株式会社ポタジェおよび、障がい者による作業委託を行っている就労継続支援B型事業所株式会社「トロワ」を運営する澤邉代表取締役社長からは「危ないからと道具さえ使わせてもらえない現状から脱却し、彼らが働いた対価としての収入を得て、趣味に支出できる経済権を獲得させたい」との思いを熱く語った。
またGENESISの別宗代表取締役は「弊社では地域医療・地域福祉・地域パラスポーツの領域において、多くの北陸の大学生が現場で利用者と共に活動している。一方、AI含め、工学分野は未開拓。こうした知的障がい者の支援における工学と連携した取り組みは、北陸から日本、あるいは世界に向けた先端的な取り組みになり得る」と本連携への期待を述べた。
今後、現場活動へ踏み込み課題認識を進め、プロジェクトデザイン活動(卒業研究)として具体的な研究テーマを立案、実践していく予定。
GENESIS株式会社は在宅医療・保健福祉事業を展開しており、社会福祉事業、パラスポーツ振興事業など、同社の就労事業所やパラスポーツ事業を利用する知的障がい者の就労や移動等の自立を生活全般にわたり支援している。就労先のひとつが株式会社ポタジェの運営するハーブ農園「ペザン」で、農作業、加工作業を通じ、利用者が社会と繋がり、生きがいを持てる生活を支援している。