東京医科歯科大学難治疾患研究所の西村栄美教授、松村寛行助教、劉楠氏らの研究グループは、加齢によって皮膚の幹細胞競合が弱まり、恒常性維持機構が減少することで、皮膚の老化が起こるという仕組みを解明した。

 組織・臓器の老化においては、損傷やストレスがその誘因となることが知られているが、紫外線を多めに浴びたとしても、すぐに高齢者のような皮膚になるわけではない。皮膚は何十年にもわたってその若さと機能を維持し続けている。このような組織や臓器の恒常性を維持する機構として幹細胞システムが知られているが、幹細胞がどのように競合しているのか、これまで詳細は明らかではなかった。

 そこで、今回、同グループは生体内の幹細胞の動態を解析した。その結果、表皮幹細胞において、ストレス応答性の幹細胞競合が起こっていることが分かった。さらに、幹細胞と基底膜をつなぐ「XVII型コラーゲン(COL17A1)」の発現がゲノムストレス/酸化ストレス誘導性のタンパク質分解によって生理学的に変動していることも突き止めた。このことから、加齢によって、表皮幹細胞のCOL17A1を介した細胞競合が減弱すると、皮膚の老化が起きることが明らかとなった。

 本成果により、皮膚老化における幹細胞競合の仕組みの一端が解明された。他の臓器の上皮組織も同様の制御機構を持っている可能性があり、今後、幹細胞の競合制御による抗老化、再生、加齢関連疾患の予防や治療への展開が期待される。

論文情報:【Nature】Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing

大学ジャーナルオンライン編集部

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