東京女子医科大学皮膚科、株式会社エムティーアイ、株式会社スタージェンは、ビッグデータ解析技術を用い、約1万人のゲノムと特徴のデータを解析した結果、「シミのできやすさ」「ソバカスのできやすさ」 「まぶたの一重二重」「眉毛の濃さ」「髪質」「毛深さ」「汗のかきやすさ」に関連する7つの特徴と関連の強い遺伝子領域を新たに発見した。

 ゲノムと特徴のデータは、エムティーアイが運営する生理日管理ツール「ルナルナ」ユーザーの協力者約2万人を対象に収集。自宅で採取した唾液からDNAを抽出し、約60万SNP※の遺伝子情報を読み取った。さらに、その中から、精度の高い検体およびSNPのみを抽出して得た11,311人、約54万SNPの遺伝子情報と体質に関するWEBアンケートの結果を解析データとした。

 解析の結果、アンケートで「シミができやすい」「ソバカスができやすい」と回答した人で、5番染色体および10番染色体に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することが明らかになり、それぞれPPARGC1B、RAB11FIP2と呼ばれる遺伝子領域だった。

 身体的特徴として「二重まぶた」を選択した人には、10番染色体のEMX2と呼ばれる 遺伝子領域に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することもわかった。EMX2は骨や神経の発達に重要な遺伝子で、頭蓋骨顔面の形成に関わっていることも報告されていることから、二重まぶたの形成に何らかの影響を及ぼしている可能性が推測される。

 また、「体毛が毛深い」を選択した人には、特徴的な遺伝型の組み合わせが、1番染色体のTBX15、2番染色体のGCC2および LIMS1、18番染色体のBCL2と呼ばれる遺伝子領域にあることもわかった。BCL2 は毛包(毛根 周辺の細胞)の細胞死と成長のサイクルに関わる遺伝子であることが知られており、他の遺伝子も毛包の成長や毛の伸長などに何らかの関与をしている可能性が推測される。

 今回の研究で得られた結果は、体質改善や個々の肌質に合わせた化粧品選びのサポートといったサービスの開発への応用、また、新たな美容技術、化粧品、皮膚科の外用薬などの開発に結びつくことにも期待される。

※SNPとは単塩基多型。約30億のヒトゲノム配列の中の個人ごとに異なる1箇所。

論文情報:【Scientific Reports】Genome-wide association study in Japanese females identifies fifteen novel skin-related trait associations

東京女子医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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