新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進するムーンショット型研究開発事業「非可食性バイオマスを原料とした海洋分解可能なマルチロック型バイオポリマーの研究開発」プロジェクトにおいて、東京大学、九州大学、化学物質評価研究機構、長岡技術科学大学、愛媛大学の研究グループは、これまで非生分解性と考えられていた市販のナイロン製釣り糸の中に、海洋生分解性ポリマーのセルロースと同等レベルで海洋中で生分解するものが複数存在することを発見した。
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な環境問題として注目されているが、網、釣り糸、ロープ、カゴといった漁業系プラスチックごみは「ゴーストギア」として海洋生態系への影響が懸念されている。
研究グループは2020年度から、使用時には十分な強度を維持しつつ、切れて海洋中に拡散した場合には迅速に分解する釣り糸の開発に取り組んできた。2023年度からは、愛媛県沖において、開発中の海洋分解性プラスチック材料および比較用の非分解性材料を1~6カ月間沈め、分解挙動を評価するフィールド試験を実施。その結果、市販のナイロン製釣り糸の中に、表面分解の兆候が認められるものが複数あることを確認した。
これまでプラスチック業界や学会、教科書などではナイロン(ポリアミド)は非生分解性ポリマーとされてきたが、本研究成果はその常識を覆すものである。
研究グループは、今回発見したナイロン釣り糸の海洋生分解性メカニズムを明らかにし、今後は漁網など他の漁業用プラスチックへの展開を目指すとともに、ゴーストギア問題の包括的解決や海洋汚染防止への貢献を目指すとしている。
参考:【新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)】これまで分解しないとされていた市販の釣り糸が海洋で生分解することを発見しました―ゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)問題解決の決定打に―