滋賀県東近江市建部北町の愛知川流域で、洪水防止を目的に江戸時代から明治時代にかけて築かれた伝統的治水施設「猿尾(さるお)」が再発見された。
兵庫教育大学、滋賀県立琵琶湖博物館、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、立命館大学、筑波大学の研究グループが、ドローンを用いた地形測量、明治時代初期の村絵図の読図、住民へのインタビュー調査、現地フィールドワークを組み合わせて、住民の記憶から忘れ去られていた施設を発見した。
発見場所は河辺いきものの森西側の河畔林であり、地元には猿尾が1基あったとの伝承が残っていたが、長年その場所は特定できていなかった。研究グループはドローンによるレーザー測量で高精度の地形情報を取得し、歴史資料の分析と住民インタビュー、現地視察を重ねて、絵図で示された場所で猿尾を確認し、江戸時代から明治時代の遺構であることを明らかにした。
猿尾は、川の流れとほぼ直角に本堤から河川に向かって設けられた小高い堤防で、長さは100~300メートルが多い。本堤の決壊を防ぐため、水流を遮って弱める役割を果たす。東海地方の木曽川で多く築かれ、岐阜県には現役の施設も残っている。