藤田医科大学の研究グループは、胃がん手術(胃切除術)を受けた患者の術前・術後における腸内細菌叢(腸内マイクロバイオーム)の変化と、それに伴う体重減少や栄養障害との関連を、世界で初めて明らかにした。腸内マイクロバイオームを活用する未来型個別化医療の可能性が示唆された。
胃がんに対する胃切除術では、術後の体重減少、低栄養、QOL低下などの胃切除後術後障害が課題となる。研究グループは、合併症の背景に「腸内環境の変化」が存在する可能性に注目。腸内マイクロバイオームのプロファイルと栄養指標・術後症状との関連を精緻に解析した。
その結果、胃切除後の腸内では、善玉菌「バクテロイデス・ユニフォルミス」の量が回復するなど、腸内マイクロバイオームの大幅な再構築が起きていることが判明。また、善玉菌「バクテロイデス・ユニフォルミス」および癌のマイクロバイオーム遺伝子マーカー(腸内細菌の特定機能遺伝子)として機能する胆汁酸代謝遺伝子量が術後に有意に上昇した。
一方、術後の平均体重減少率は―10.9%(全摘除群で−13.5%と顕著)。この著しい体重減少と、炎症抑制作用を示す善玉菌の短鎖脂肪酸産生菌「フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ」の減少が関連し、さらに、血清プレアルブミンや亜鉛の低下と悪玉菌の大腸菌の増加が相関していた。また、血清プレアルブミンと亜鉛の低値は、大腸菌の増加と関連していた。
今回の研究成果から、オリゴ糖などのプレバイオティクス(有用菌の増殖を促進する食品成分)を用いることで、腸内マイクロバイオームの改善および術後症状の緩和につながる可能性が示され、今後の臨床応用が期待されるとしている。