スマートフォンの使い方から持ち主の集中力を推定する技術を、株式会社NTTドコモ、慶應義塾大学、東京大学の共同研究グループが開発した。
人の集中力を客観的に計測する方法として、Go/NoGo課題が知られている。Go/NoGo課題とは、Go(例えば指定の文字 Pに対しできる限り早く反応する)、およびNoGo(例えば指定の文字Xでは反応を抑制する)の2つの反応を判断する課題で、判断のスピードと正確さ、すなわち集中力の数値化に適している。
しかし、労働環境などでは、定期的にGo/NoGo課題を実施して集中力を評価することは現実的とはいえない。そこで本研究では、スマートフォンの日常利用のビッグデータとGo/NoGo課題の結果のデータを組み合わせ、AIによりスマートフォンの使い方から持ち主の集中力を推定するモデルを構築した。
スマートフォンのデータとは、加速度などのセンサーデータ、位置情報、画面のON/OFFといった端末の利用状況などを指す。研究グループはこれを、約250種類の行動特徴量(身体的動き、移動パターン、アプリの利用頻度など)として数値化し、同一者のGo/NoGo課題データとの関係性をAIに学習させた。これにより、スマートフォンから取得した行動特徴量から、集中力(Go/NoGo課題の成功率)を推定することが可能となった。
本技術の妥当性評価分析では、34人を対象に、Go/NoGo課題の成功率を平均で約74%の精度で推定できることが確認された。スマートフォンを普段通り使うだけで、自身の集中力を推定できるため、例えばトラックやバスの運転手が、前日までのスマートフォンの使い方から当日の集中力を推定し、適切に休憩をとるなどの活用法が考えられる。このように、企業が働き方改革を推進する中で、働く一人ひとりの意識改革や非効率な勤務状況の見直しに活用が期待できる技術だといえる。