名古屋大学大学院医学系研究科の星野純子准教授らの研究グループは、中高年者のうち、認知症に関わる知識がある、最近1年間に悩んだ症状が多い、など4つの特徴を持つ者は、自分が認知症を発症することへの強い不安を感じていることを明らかにした。
日本では、65歳以上の高齢者のうち3、4人に1人は認知機能にかかわる症状があるとされる。自分の将来の認知症発症への適度な不安は、予防行動や受診行動を促すが、強すぎる不安(認知症恐怖)は、死への願望や幸福感の低下などと関連し生活の質を低下させ、認知症との共生社会の実現を妨げると指摘されている。
そこで研究グループは、自分が認知症を発症することを想像して強い不安を感じる人たちの特徴を明らかにすることを目指し、愛知県、岐阜県に住む40歳以上の中高年者1045人を対象に調査を行った。
その結果、①認知症に関わる知識が多い、②最近1年間に悩まされた症状が多い、③中等症以上の抑うつである、④父母のいずれかもしくは両親が認知症の診断を受けている、という4つの特徴を持つ中高年者は、そうでない者と比べて、自分が認知症を発症することを想像して強い不安を感じていることが明らかになった。
今回の研究成果は、自分の認知症発症に強い不安を感じている人たちを効率的に発見し、効果的に支援することに役立つ可能性がある。研究グループは次段階として、地域の人々への認知症教育に追加が必要な内容の提案や身体的な不調の緩和など、自分の認知症発症への強い不安に対する適切な管理を可能にする研究を計画している。